女王になり、このセレスティザムに住むようになって半年。
教団の皆も騎士たちもずっと自分に優しくしてくれているし、きっとみな良い人なのだろうとは思う。けれども遠巻きにされ、腫れ物に触れるようなそれは、ハンナやサリーとの気兼ねのない友達づきあいとも、陽だまり邸の仲間たちの気遣いとも違っていた。
仕方のないことだと思う。
あの人たちにとって、自分は「女王陛下」なのだから。
一人でいることも、今までだって同じだった。
大丈夫、そのうちにこの生活にも慣れるはず。
アンジェリークは毎日そうしているように自分に言い聞かせる。
両親が亡くなった時、ベルナール兄さんと別れた時、学校に行った時、それから陽だまり邸での生活。
嬉しいことも辛いことも、戸惑いも。時間は何もかも少しずつ薄めてくれる。
アンジェリークは膝をぎゅっと抱えた。
怖いのは、自分の一挙手一投足、そして言葉が皆の関心の的になり、良くも悪くも影響を及ぼすことだった。こうして欲しいと一言言えば、それが叶うようにと誰かが骨を折ってくれる。
それを知ってからのアンジェリークは、思うように行動したり口を聞いたりができなくなった。
特に弱音や誰かを責めるような物言いは、周囲がそれをどうとらえるかと思えば、怖くて口には出せない。
──ルネさんはこういうとき、どうしてるんだろう。
(略)
彼女の瞬きがしだいに緩慢になっていくのをルネは黙って見つめていた。
蜜蝋の燃えるこっくりした香りで、空気が重たるい。
会えない日々は相変らず続いていた。
昼間彼女のそばにいられるのは、騎士たちや教団員、それから陽だまり邸の仲間たち。
そうでないのは自分だけだ。
自分だけが、彼女から遠く隔てられている。
──ボクにはキミしかいないのに。
指先で頬に触れる。
自分だけの彼女が欲しかった。せめてこの時間だけでも。
「……アンジェリーク」
アンジェリークのまぶたが何とか開こうとするように動き、まつ毛が震えた。
手を離し、唇で触れる。
柔らかい頬。なめらかな額。
触れたところから、何かがルネの中に流れ込んでくる。
彼女が帰ってきた日に感じたのと同じ、震えるような何か。
胸が痺れる。
息ができない。
「アンジェリーク」
思わず呼んだ瞬間、彼女が目を開けた。
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