「レイン!」
横を歩いていたアンジェリークが大声をあげた。
本屋の店先にいたレインがこちらを見る。
「お買い物?」
「ああ。で、依頼は?」
「いろいろと調べてみましたが、やはりタナトスだと考えていいようですよ」
「そうなのか」
「今晩、屋根に上ってみることになったの」
「大丈夫か?」
「ええ、高いところは平気だから」
ニクスは二人の会話を聞きながら考えた。
「お手伝いをお願いしてもよろしいですか」
劇場の屋根は高い。一応万全を期してはいるが、万が一のことも考えられないわけではない。
「いいぜ。何時に行けばいい?」
「では、六時に劇場の前で」
「わかった」
レインはちらりと時計を見てからうなずいた。
──やはり頼んでよかった。
数時間後、ニクスはそう思った。
下から見たときはそれほどでもなかったが、劇場の屋根は登ってみるとけっこうな急斜面だ。風も強い。
夕陽をあびた屋根板は、錆びた銅の色が夕焼けで微妙な色に見える。
ニクスはアンジェリークに屋根の片隅を示した。屋根板のすきまから芽を出していた雑草がいちように枯れはてていた。
「タナトス、ですか?」
「そうでしょうね」
二人から離れて歩き回っていたレインが、両手を口もとに当てて二人を呼んだ。
「ここならいいんじゃないか?」