text index>王子様とお姫様はそれからも
王子様とお姫様はそれからも




「もったいない、なんておかしなことを言わないでくれないか」
 少しだけ先輩の雰囲気が変わった。
「俺は自分で決めてここに来た。他のことはどこでだってできるけど、今の君と一緒にいられるのはここだけだから。そのことは後悔していないし、これからもきっとしないだろうね」
「ごめんなさい」
「ああ、謝らないで。怒ってなんかないよ」
 つないだ手に優しく力がこもる。なだめるように、慰めるように。
「ただ俺は君に、もったいないことなんて何もないって、わかって欲しかっただけだから」
「……わかりました」
 答えながらも、なぜか私の気持ちは晴れなかった。 

(略)

「あれ、今日も西蓮寺先輩、お休み? じゃ、部室行こっか?」
 お昼を一緒に食べよう、と誘った私に、ののちゃんは心配そうな目を向けた。
 部室に行っても、その表情は変わらなかった。
「もう今日で四日目だよね」
 サンドイッチのフィルムをはがしながら、ののちゃんはこちらを上目遣いで見た。
「うん」
 私はミルクティの紙パックにストローをぶすりと突き刺した。
「電話は相変らず?」
「うん、携帯は電源が入ってないか、圏外だって」
「あー、もしかしたら寮に忘れて帰っちゃってるかもしれないなー」
「そうかも」
 理人先輩はあれからずっと学校を休んでいる。理由はわからないが、学校にはいないらしい。
 携帯電話もつながらないし、連絡も言伝も何もない。
「どうしたのかな」
 私は慌ててミルクティを口にした。
 でないと声が震えてしまいそうだったから。
「会いに行ってみたら?」
 急に、ののちゃんが明るい声を出した。
「会いに? どこへ?」
「生徒名簿か何かあるはずじゃない? それを見れば……」
「フランスの住所だったらどうしよう?」
 いくらなんでもそこまでは追いかけていけない。
「そんなの見てみないとわからないでしょ? ここでいろいろ悩んでるより、そうしたほうがいいよ。私、そういうのないか聞いてきてあげる!」


update : 10.01.11
text