ルネさんになんて言って欲しかったんだろう、私は。
アンジェリークは足元に目を落とした。
『いいと思うことを、いいと思うように』
その言葉に、刺された気がした。
きっとルネさんの言うことは、本当にそうなのだと思う。
でも、私には何がいいことなのか、どうやってそれを実現できるのかがわからない。
アンジェリークはゆっくりと、胸につかえた息を吐きだした。そうでもしないと、涙がこぼれてしまいそうだった。
どうすれば、皆の望むように世界を幸せで包むことができるんだろう。
オーブハンターでいた頃はこんなことを考えたことはなかった。
いつも勇気づけ慰めてくれる優しい仲間がいた。依頼をこなすたびにきらめきながら上がっていく幸福度メーターの数値が、きっと自分たちのしていることが世界の幸福につながっているという確信を与えてくれていた。
それに、依頼の間に次々と起こる事件はどれも急を要していて、戸惑いながらもその時々にやれるだけのことをやってみるしかなかった。
幸福度メーターは、エレボスとの戦いの間に失くしてしまっていた。
時間は自分を待っている。
今は、世界が幸せであれと毎日祈ってはいるし、手すきの銀樹騎士に復興の手助けを頼んでいるけれど、逆に言えば、それくらいのことしかできていない。
世界は本当に良い方向に進んでいるんだろうか?
タナトスが消え、復興が進んではいても、亡くなった人が帰ってくることはない。
タナトスによる呵責の跡やジンクスの爪あとも、あちらこちらに残っている。困っている人はまだたくさんいるとも聞く。
もっともっと祈ればいいのか、それとも他にやるべきことがあるのか。
考えれば考えるほど、わからなくなっていく。
アンジェリークは、両手で顔を覆った。
こんなに迷っていてばかりいれば、女王を待ち続けてきてくれた教団の人たちですら、いつか失望してしまうかもしれない。
それよりも世界が、宇宙が不幸せになってしまったら、どうすればいいんだろう。
──私のせいで。